大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)274号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由は別紙記載のとおりである。

論旨の帰するところは、兵庫県知事が住吉村住民の同村議会解散の請求にもとずく解散の投票をまたないで地方自治法七条一項により同村の神戸市への合併を決定したことは違法であり、右合併決定は住民の議会解散請求権を妨害した違法があるというにある。

しかし、地方自治法七条一項による知事の処分は、関係市町村の住民の権利義務に関する直接の処分ではないから、当該市町村の住民として有する具体的権利義務について争のある場合に当該権利義務の存否について訴訟をもつて争うは格別、知事の当該処分そのものの適否については訴を提起する法律上の利益を有しないものとすることは当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第一二八五号同三〇年一二月二日第二小法廷判決)とするところである。従つて、上告人のように住吉村の住民として有する具体的権利義務の存否について争うのでなく、兵庫県知事のした本件合併決定の処分そのものを違法であるとしてこれが取消を求めるため訴を提起することは、法律上これを認めた特別の定がないから許されないものというベく、上告人が住吉村議会解散の請求手続中の者であつたからといつて、別に考えなければならない理由はない。してみると、原判決が知事の本件合併決定処分そのものの適否について判断をしたのは不要の判断をしたものというべきであり、その当否は、もとより本訴の判決の結果に影響を及ぼすベきものではない。

以上説示のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例